近年、「熊が住宅街に現れた」「学校やスーパーの近くで目撃された」といったニュースが増え、かつては「山奥の問題」とされていたクマの存在が、今や都市部を含む私たちの“生活圏”にも侵入してきています。
気候変動や人口減少などの背景により、人と熊との境界は以前にも増して曖昧になっているのです。
近年の熊被害の傾向
- 2023年度(令和5年度)は、熊による人身被害が 198件、被害者数は 219人、うち死亡は 6人と、統計開始以来過去最多を記録しました。
- 2023年4〜10月のクマ目撃件数は実に 19,192件に上り、2020年の18,000件を上回る過去最多でした。特に東北地方では全体の60%を占め、岩手と秋田だけで約9,000件(岩手:5,158件、秋田:3,000件)もの目撃が報告されています
- 2025年1月〜5月12日までの速報では、全国の出没件数は 1,404件(前年同期比+27%)、人的被害は 11件(重傷3、軽傷8、前年同期比+22%)となっています。
- また、2023年度には約7,700頭のクマが捕獲・殺処分されたとの報告もあります。
これらのデータから、「熊の出没・被害は着実に増加しており、今年もその傾向が継続している」と言えます。
被害増加の背景にある3つの要因
要因①:生息域の拡大と人口減少
- ヒグマの推定個体数は、令和2年度で約 11,700頭。30年間で2倍以上に増加しています。また、分布域も約1.3倍に拡大しました。
- ツキノワグマも本州で増加または安定化しており、分布域は平成15年度と比べて約1.4倍に広がっています。
- 一方で、農村部の過疎化・耕作放棄地の増加により、熊が人里近くにも進出しやすくなっています。
要因②:食料不足と人への慣れ
- 2023年には、東北地方を中心にブナの実が大凶作だったことが、熊の人里への出没増加の一因とされています。
- 熊の主要食であるブナやミズナラなどの堅果類が不作の年には、代替として人里の生ごみや果樹園へ出向く傾向も強まります。
要因③:人々の行動の変化
- 登山やキャンプ、山菜採りなどのレジャー需要の高まりによって、熊の生息域への人の侵入が増加しています。
- また、熊に対する知識不足や「まさか自分に遭遇するとは」という油断によって、対応が後手に回ることが少なくありません。
熊と安全に共存するために、今すぐできること
【予防編】熊を寄せ付けない対策
- 山に入るときには「鈴・ラジオ・熊撃退スプレー」の3点セットを携帯しましょう。音や匂いで熊に人の存在を知らせることが重要です。
- 家庭での対策として、生ごみやペットフードを屋外に出しっぱなしにしない、庭の果樹(柿・栗など)は適時収穫・管理することが熊の誘惑を減らします。
【対処編】もし出会ってしまったら
- 慌てず冷静に行動しましょう。熊に背を向けず、ゆっくりと後ずさりするのが基本です。
- 走って逃げないこと。熊は人間より速く走れるため、追いかけられるリスクが高まります。
- 大声や威嚇行為は逆効果の可能性あり。熊の攻撃性を刺激しないのが肝要です。
まとめ
熊による被害の増加は、単なる“野生動物の問題”ではなく、人と自然環境のバランスの変化を映し出す社会課題です。
一人ひとりの意識と小さな行動が、熊との共生への第一歩になります。
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hourei/h_horitu/attach/pdf/suisin_kaigi-23.pdf
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/kuma-situation.pdf




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