過去のこの期間、世の中では何が起きていたのでしょうか?20年前・15年前・10年前・5年前の出来事を振り返ってみます。日々のニュースと照らし合わせて、過去の出来事がどのように現在につながっているのか見えてくるかもしれません。
2005年(平成17年)10月11日〜10月20日の出来事
【国際】中国の有人宇宙飛行「神舟6号」打ち上げ
2005年10月12日、中国は神舟6号を打ち上げ、飛行士2名(費俊龍/フェイ・ジュンロン、聶海勝/ニエ・ハイシェン)が搭乗して数日間の周回飛行を行いました。ミッションでは宇宙船の長時間滞在能力や生命維持装置、宇宙医学的な観察・実験などが行われ、中国の有人宇宙技術の実用性と継続的開発能力が実証されました。
2005年10月16日、神舟6号は予定された着陸地点に無事帰還し、ミッションは成功裏に終了しました。地上チームは搭乗員の健康状態を確認し、回収後のデータ解析や船内実験の結果整理が行われました。
帰還成功は中国の有人宇宙計画の自信につながり、後続の有人・有人支援ミッション(神舟シリーズ、天宮ドッキング実験など)や宇宙開発体制の強化へと反映されました。搭乗員の健康記録やミッション報告は公開・分析され、国内外の宇宙関係者にとって参照可能な実績となりました。
【国際】インドでRight to Information Act(情報公開法)の全面施行
2005年10月12日、インドの「Right to Information Act(情報公開法)」が全国で全面的に施行され、国民が政府機関に対して情報公開を請求する法的権利が法制化されました。これにより中央・州レベルで情報公開機関(Information Commissions)が設置され、行政の透明性と説明責任を制度的に強化しました。
草の根の市民運動やNGOの長年の働きかけ、数州での先行的な情報公開法の成功を受けて、中央政府レベルで全国法として成立したものです。政府が保有する情報へのアクセスを市民に保障することで、汚職摘発や政策の公開討論を促す狙いがありました。
その後、RTI法は発効以降、行政の透明化や市民による監視を大きく進めましたが、情報請求の増加に伴う事務負担や公開除外の適用を巡る議論、情報請求者への圧力や安全の問題も生じました。さらに長期的には2019年の改正を巡る論争など、法制度の運用や独立性をめぐる課題が継続的に指摘されることになりました。
【国内】郵政民営化関連法が参議院で可決・成立
2005年10月14日、参議院において郵政民営化関連の主要法案が可決され、法制化されました。この成立により政府が進めてきた郵政改革(日本郵政の再編・民営化に向けた法的基盤の整備)が制度上で確定し、郵便・貯金・簡易保険といった分野の事業形態や運営の在り方が大きく変わる道筋がつきました。
小泉純一郎政権が掲げた構造改革の目玉政策であり、郵政事業の民営化は政治的な大争点となっていました。総選挙などを経て与党が民意の支持を得たと受け止められた流れの中で、最終的に関連法案が国会を通過しました。
法成立後は段階的な組織再編や制度整備が進められ、郵政事業は公的色の強い体制から民間的運営へと移行していきました。同時に、地域金融や地方サービスの維持、公共性と収益性の調整、企業ガバナンスのあり方などが長期にわたる政策課題として残り、政治・社会的な論争や立法的修正の要請を生みました。
2010年(平成22年)10月11日〜10月20日の出来事
【国際】ノーベル経済学賞:Diamond・Mortensen・Pissarides の受賞
2010年10月11日、ノーベル経済学賞はピーター・A・ダイアモンド、デイル・T・モーテンセン、クリストファー・A・ピサリデスの3氏に授与されました。受賞理由は「労働経済におけるサーチ理論に関する功績」で、求職者と求人の間に存在する摩擦(検索コストや情報の非対称性)が失業や賃金、雇用構造にどのように影響するかを理論的に示した点が評価されました。
従来の完全雇用を前提としたモデルでは説明しきれない現実の失業現象に対し、3氏は検索・マッチング過程をモデル化して現実に即した政策的示唆を与えました。これによりマクロ経済学と労働経済学の橋渡しが進みました。
彼らの理論は学術研究だけでなく、雇用政策や失業対策の分析に広く用いられ、雇用保険・職業紹介・労働市場の規制緩和/強化の効果検証など実務的な政策設計にも影響を与え続けました。
【国際】チリ鉱山で閉じ込められていた33人が全員救出された
2010年10月13日、チリ北部コピアポ鉱山で69日間にわたり地下に閉じ込められていた33人の鉱夫が、一人ずつ専用の救出カプセルで地上へ引き上げられ、全員が無事に救出されました。救出作業は世界中の注目を集め、掘削による縦穴開削と救出カプセルによる引き上げを組み合わせた大規模な技術作戦が実行されました。
事故は2010年8月5日に坑道の崩落で発生し、多国の技術支援とチリ政府の主導で救出計画が立案されました。NASA や各国の掘削・救助専門家らが協力し、複数の掘削方式を並行して試行したうえで最終的に垂直救出孔を利用しました。
救出後は健康診断・精神的ケア・職場復帰支援が行われ、救出技術と危機対応の成功例として世界的に評価されました。一方で事故の原因究明や鉱山の安全基準の見直し、労働安全管理の強化が求められ、関連する法規・産業慣行の点検が進められました。
【国際】ゴッタルド基礎トンネルの貫通
2010年10月15日、スイス・アルプスを貫くゴッタルド基礎トンネルの掘削が最終的に貫通し、トンネル建設は大きな節目を迎えました。ゴッタルド基礎トンネルは全長約57キロメートルで、完成すれば世界最長級の鉄道トンネルとなる大規模インフラ事業でした。
欧州内での貨物輸送をトラックから鉄道へ移行させ、アルプス越えの輸送効率と環境負荷低減を図る長年の政策構想の一環として建設が進められてきました。複数の掘削機・シールド工法と大規模な資金・技術投入で工事が進行しました。
貫通後も設備工事と試運転を経て、ゴッタルド基礎トンネルは2016年に正式に開業し、欧州の陸上輸送・物流構造に変化をもたらしました。長期的にはトラック輸送から鉄道輸送へのシフト促進、輸送時間の短縮、CO₂排出削減といった効果が期待され、欧州の国際物流と経済活動に持続的な影響を与えました。
2015年(平成27年)10月11日〜10月20日の出来事
【国内】マイナンバー準備を巡る収賄容疑で厚生労働省職員が逮捕
2015年10月13日、マイナンバー制度の準備に関わる情報政策関連事業を巡り、厚生労働省の情報政策担当の職員が収賄容疑で逮捕されました。逮捕後、同職員は起訴され、事件を受けて厚生労働省は監察本部を立ち上げて事案の検証と再発防止策の検討を行いました。背景としては、マイナンバー制度導入に向けた大規模なシステム開発・調達が進む中で、外部業者との関係や調達手続きの不備が問題視されていた点がありました。
その後、監察本部が調査報告をまとめ、内部管理や調達ルールの見直し、コンプライアンス強化策が提示されるとともに、関係者の処分や検証・再発防止のための制度的対応が進められました。逮捕事件はマイナンバー制度への国民の信頼に影を落としたため、制度運用前の説明責任と管理体制の強化が強く求められる契機となりました。
【国内】川内原子力発電所2号機が原子炉を起動(再稼働)
2015年10月15日、九州電力は鹿児島県の川内原子力発電所(川内)2号機の原子炉を起動し、再稼働プロセスに入ったと発表しました。新規制基準に基づく審査に合格した原発の再稼働は、同年8月の1号機に続く事例であり、原発政策の実務上の転換点と受け止められました。経緯としては、福島第一原発事故後に導入された新規制基準への適合審査を経て、安全確認を前提に段階的に運転再開の手続きが進められていたものです。
その後としては、九州電力は計画どおりに運転調整を進め、同年10月21日には発電を再開して商用運転への移行を進めました。再稼働は地域や一部市民からの賛否を呼び、エネルギー政策や避難計画、規制運用の在り方を巡る議論を長期化させる要因となりました。
【国内】旭化成建材の杭工事で施工データの転用・改変が判明
2015年10月20日、旭化成は子会社の旭化成建材が施工した横浜市内の分譲マンションの杭工事について、施工不具合および施工報告書の電流計・流量計データの転用・加筆・改変(改ざん)があったことを公表しました。同社の公開資料によると、施工した杭473本のうち複数本でデータの転用や改変が確認され、結果として当該物件の一部杭が支持層に到達していない可能性が判明しました。発端は施工会社からの指摘で、同社は直ちに調査委員会と外部調査体制を設け、居住者の安全確保を最優先に対応すると表明しました。(横浜傾きマンション事件)
当該案件をきっかけに過去の施工記録の精査が全国的に拡大し、業界全体での施工データ管理や点検体制の見直し、元請け責任や監督体制の強化を促す結果となりました。企業側は補修や補償を含む対応を表明し、行政や外部の専門家による検証が続けられました。事件は建築・土木分野のガバナンスと信頼回復の重要性を改めて浮き彫りにしました。
2020年(令和2年)10月11日〜10月20日の出来事
【国際】 エイミー・コニー・バレット上院公聴会が開始された
2020年10月12日、米国上院司法委員会はエイミー・コニー・バレット判事(当時)の最高裁判事任命に関する公聴会を開始しました。公聴会は当初予定どおり複数日にわたり行われ、委員からの質疑や証言が行われました。これはルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の逝去に伴う欠員を埋めるための手続きの一環であり、パンデミック下の開催で安全対策や手続きの速さが国内外の注目を集めました。
ギンズバーグ判事の死去(2020年9月)により空席が生じ、トランプ大統領は9月末にバレット氏を指名しました。共和党は上院での迅速な審査と採決を目指し、対立する民主党側は選挙直前の任命は不適切だと主張していました。公聴会は通常の確認手続きに沿って行われつつ、非常に政治的に高緊張な環境で進められました。
公聴会ののち、上院は10月26日に本会議でバレット氏を賛成多数(52対48)で承認し、彼女は最高裁判事に就任しました。今回の任命は最高裁の保守多数化を決定づけ、今後の重要判例(中絶、医療保険、選挙関連など)に長期的な影響を与えるとの見方が広まりました。

【国際】ジョンソン&ジョンソン(J&J)がワクチン第III相臨床試験の投与を一時停止
2020年10月12日、ジョンソン&ジョンソン(J&J)は同社のCOVID-19ワクチン候補(Janssen 製ワクチン)の臨床試験(第III相を含む)の投与を、一人の参加者に原因不明の病状が発生したため一時停止すると発表しました。企業は安全性を最優先に、独立の医学的審査委員会と協力して事象の評価を行うと表明しました。
大規模なワクチン試験では被験者の健康に関する「重大な有害事象」が報告された場合、規制上および倫理上の理由から投薬を一時中止して原因の調査を行う手続きが定められており、今回の停止もその枠組みに従ったものです。ワクチン開発の透明性と安全性確認が重視される状況で、製薬各社は慎重な対応を行いました。
調査の結果と追加の安全確認を経て、J&Jは数週間後に臨床試験の再開準備を進めると発表しました。最終的に同ワクチンは規制当局の審査を経て各国で緊急使用・承認のプロセスが進められましたが、後にごく稀な血栓関連の副反応報告が問題化し、各国での使用勧告や年齢制限など運用上の調整が行われています。
【国際】NASAのOSIRIS-RExが小惑星ベンヌから試料採取(TAG)を実施
2020年10月20日、NASAの探査機OSIRIS-RExは小惑星ベンヌの表面に短時間接触する「Touch-And-Go(TAG)」操作を行い、試料採取を成功させました。ミッションでは採取機構(TAGSAM)を用いてナイトンゲール(Nightingale)と名付けられた採取地点から微粒子を吸引・捕獲し、その直後に安全に後退しました。地上チームは接触成功の確認を受け取り、ミッションは想定どおりに進行しました。
OSIRIS-RExは2018年からベンヌを観測してきた探査機で、TAGによる直接採取は地球外物質を初めて「大規模に」回収する試みの一つでした。小惑星試料の分析は太陽系の形成史、有機物や水の起源、さらには将来の小惑星資源利用や惑星防御の知見につながることが期待されていました。
採取後、探査機は採取地点の撮影などを行い、試料を安全に機体内に保管して地球帰還の準備を進めました。回収した試料は地球に持ち帰られ、詳細分析により数多くの研究成果が生まれることが期待されています。OSIRIS-RExの成功は惑星科学の基盤データを大きく前進させ、長期的な学術的波及効果をもたらしました。
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