かつて太陽系の「第9惑星」とされていた冥王星は、2006年に国際天文学連合(IAU)によって「惑星」から「準惑星」へと分類が変更され、大きな話題となりました。
この記事では、冥王星がなぜ格下げされたのか、その背景や惑星の定義の見直し、そして現在の冥王星の位置づけについて、わかりやすく解説します。
冥王星とはどんな天体?
冥王星は1930年、アメリカの天文学者クライド・トンボーによって発見されました。「太陽系第9惑星」として長く親しまれ、教科書などにも掲載されるなど広く知られていました。
- 直径:約2,377km(月より小さい)
- 軌道:太陽からの平均距離は約59億km。黄道面から約17°傾いている
- 主な特徴:氷と岩で構成され、薄い大気がある
しかし、冥王星は他の惑星と比べて小さく、軌道も特異であることから、以前より「本当に惑星で良いのか?」という議論がありました。
なぜ格下げされたのか?
冥王星が格下げされる直接的なきっかけとなったのは、2005年に発見された「エリス」という天体です。エリスは冥王星よりも大きく、太陽系外縁部に位置しています。
この発見により、
「冥王星が惑星であるなら、エリスも惑星として認めるべきではないか?」
という議論が巻き起こりました。さらに、同様の天体が今後も見つかる可能性があり、そうなると惑星の数が無秩序に増えてしまうという懸念も生まれました。
そこで、2006年に国際天文学連合(IAU)は惑星の定義を見直すことを決定。冥王星が新たな基準を満たしているかどうかが再検討されました。
惑星とされるための3条件
IAUが定めた惑星の定義は、以下の3つの条件をすべて満たす天体です:
- 太陽の周りを公転している
- 自身の重力で球形を保つだけの質量を持っている
- 軌道周辺から他の天体を排除しており、その領域を支配している
冥王星は1と2はクリアしていましたが、3番目の条件を満たしていませんでした。
冥王星の軌道付近には似たような大きさの天体が多数存在しており、軌道を「支配している」とは言えなかったのです。
「準惑星」とは何か?
IAUは、惑星とは別に新たな分類として「準惑星(dwarf planet)」を設けました。
準惑星の条件は以下の通りです
- 太陽の周りを公転している
- 自身の重力でほぼ球形になっている
- 軌道周辺の他の天体を排除していない
- 衛星ではない
冥王星はこれらの条件をすべて満たしていたため、準惑星に分類されることになったのです。
冥王星以外の準惑星たち
冥王星の他にも、以下の天体が準惑星に分類されています
- セレス:1801年発見。小惑星から格上げ。火星と木星の間の小惑星帯に位置する。
- エリス:2005年発見。惑星の定義見直しのきっかけ。冥王星よりも外側の軌道を回る。
- マケマケ:2005年発見。2008年に準惑星に分類。新定義後初の追加。
- ハウメア:2003年の観測を2005年に再分析したことによって発見。2008年に準惑星に分類。
これらの発見が、太陽系の構造に対する理解をさらに深める契機となりました。
当時の反応
冥王星の「降格」には、さまざまな反応がありました。
一部は科学的分類として受け入れた一方で、多くの人がショックを受け「冥王星を惑星に戻そう」という署名活動も行われました。
アメリカでは、冥王星を称える「冥王星の日(Pluto Day)」を祝う学校も現れました。
ただし、冥王星の科学的価値が下がったわけではありません。NASAの探査機「ニューホライズンズ」が2015年に冥王星へ接近した際に撮影した画像は、冥王星の美しさと地質的な多様性を示し、多くの人に感動を与えました。
まとめ
冥王星が格下げされたのは科学的な分類の見直しによるものであり、「惑星」の新しい定義に合わなかったことが理由です。
しかし、冥王星の存在意義が損なわれたわけではありません。むしろ、「準惑星」という新たな分類を通じて、太陽系に対する私たちの理解はより深まりました。
冥王星はこれからも、宇宙への探究心を刺激する存在であり続けるでしょう。
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