マイクロン社(Micron)が、自社が展開するCrucialブランドの廃止 を発表しました。
Crucialといえば、手頃な価格で高品質なSSD・RAM製品を展開してきた“PC自作の味方”。
しかし、この長年続いたブランドも AI企業への供給集中 を理由に幕を下ろすことになりました。
今回の発表の概要、メモリ価格高騰の背景、さらに今後予想されるPC市場への影響まで整理します。
Crucialブランド終了の背景
Micronによると、今回の決断は 消費者向け事業の縮小 が理由です。
同社は急拡大するAI市場にリソースを集中し、
- AIデータセンター向けの大規模メモリ供給
- 高付加価値のHBM(高帯域幅メモリ)分野への投資
- 戦略的顧客(AI企業)との契約強化
へ舵を切るとのこと。
実際、AI需要はとてつもない勢いで膨らんでいます。たとえば、
- OpenAIはSK HynixとSamsungから、Stargateプロジェクト向けに月90万個のDRAMを調達
- 他のAI企業もデータセンター増設ラッシュ
結果として、Micronのような大手メモリ企業が「個人よりAI」へ移行するのは必然だったとも言えます。
Crucial廃止で予想される“メモリ価格”のさらなる高騰
すでにPCパーツ界隈では、2024〜2025年にかけてRAM価格が急騰しています。
その理由は主に以下の3つ:
- AI企業によるメモリの“爆買い”
- HBM(3D積層構造を持つ次世代メモリ)製造優先による一般DRAMの供給減少
- メーカー側の“コンシューマー軽視”傾向
そして今回、低価格帯の代表格であるCrucialが撤退することで、
「安い選択肢がひとつ消える」=価格の下支え要因が消滅 します。
BTOメーカー・自作ユーザーにとっては、かなり厳しい状況です。
Crucial製品はいつまで買える?
Micronは 2026年2月末まで出荷を継続 予定。
また、既存製品の保証サービスは今後も提供するとしています。
- DRAM
- SSD
- ポータブルSSD
これらを買い足したい人は、2025年内〜2026年初頭が最後のチャンス になる可能性大です。
なぜAI企業はこんなにメモリを必要とするのか?
ChatGPT・Claude・Geminiなど大規模モデルが動くデータセンターでは、
1つのAIサーバーにTB単位のRAM が搭載されます。
さらに、
- 推論(普段使っているAI操作)
- 学習(新モデルのトレーニング)
どちらも大量のDRAMが必要。
特に学習は、「HBMが多いほど正義」という状態。
これにより、メモリメーカーはAI向け製品に全力投入する構図ができています。
今後どうなる?消費者向けメモリ市場の展望
Crucial消滅は、コンシューマー市場に以下の影響を与えそうです。
メモリ価格の“高止まり”
AI企業の需要が落ち込まない限り、値下がりは期待薄。
ASUS、Kingston、Corsairなどの競争激化
Crucialの空いたポジションを奪いに来る可能性は高い
→ ただし価格が安くなるかは別問題。
PC自作人口の減少
メモリ価格は“自作PCの入口価格”に直結
→ エントリーユーザーの参入障壁が上がる。
メーカー側は「メモリ少なめ構成」を標準化
PCメーカーがRAM 16GB → 8GB構成へ戻る…という動きも出るかもしれません。
まとめ
長年、価格と品質のバランスに優れたCrucialは、自作PC初心者から上級者まで幅広く支持されていました。
そのブランドが消滅するという事実は、「AI優先の時代への移行」を象徴する出来事 だと言えます。
メモリ価格の高騰はしばらく続きそうですが、今後どのメーカーがこの空白を埋めるのか、注視していきたいところです。


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