デザインツールの世界に激震が走っています。プロフェッショナル向けクリエイティブソフトウェア「Affinity」シリーズが、この度、永久に無償で提供されることになり、大きな注目を集めています。特にAdobe製品のサブスクリプションモデルに悩んでいたクリエイターにとって、これは乗り換えを真剣に検討するチャンスかもしれません。
この記事では、Affinityの運営元や信頼性、そして気になるAdobe製品との機能比較、さらに無償化の背景にあるCanvaとの関係について掘り下げていきます。
Affinityとは?
Affinityシリーズは、イギリスの老舗ソフトウェア開発会社 Serif Europe Ltd.(セリフ社) によって生み出されました。
同社は1987年に設立され、もともとはWindows向けのDTPソフト「PagePlus」などを手がけていましたが、よりプロフェッショナルなグラフィック制作を目指し、2010年代に入って新ブランド「Affinity」を立ち上げます。
2014年にMac向けの Affinity Designer が登場し、その高性能と低価格でクリエイターの間に衝撃を与えました。続いて Affinity Photo(2015)、Affinity Publisher(2019) がリリースされ、
“サブスクリプション不要のプロ用デザインソフト” として、Adobe製品の有力な代替ツールとして地位を確立していきます。
2022年にはシリーズ全体を刷新した Affinity 2.0を発表、そして2024年3月には Canvaによる買収が発表され、2025年10月30日(現地時間)に3つのソフトを統合したAffinity 3.0の無償公開という 歴史的転換を迎えました。

運営会社は?
Affinityはもともと英国のSerif社によって開発されていましたが、2024年3月にオンラインデザインプラットフォームの巨人Canvaによって買収されました。
信頼性の向上
この買収はデザイン業界に大きな衝撃を与えましたが、結果としてAffinityの信頼性や将来性を高める要因となっています。Canvaはすでに世界中で数億人が利用する巨大企業であり、その潤沢な資金力と技術力がAffinityの開発に注ぎ込まれることが期待されます。
永久ライセンス継続の「誓約」
買収後、CanvaとAffinityは共同で「AffinityとCanvaのPledge(誓約)」を発表し、永久ライセンスの継続と、スタンドアロン製品としての継続的な投資を約束しています。つまり、Canvaの戦略の一部として、AffinityがAdobeのプロ向け市場への対抗馬として位置づけられ、継続的に開発されることの裏付けとなります。
Canvaとの関係:無料化の背景と連携の可能性
Affinityの無料化は、Canvaによる買収と密接に関連しています。Canvaは、Affinityを自社のビジュアルツールキットの重要なプロフェッショナル向けピースとして位置づけました。
ターゲット層のすみ分け
- Canva:主にテンプレートを活用し、手早くデザインを完成させたい層(初心者〜中級者)。
- Affinity:ピクセル単位の精密な編集やプロフェッショナルな印刷用データ作成など、より高度で細部を作り込む層(プロ〜ハイアマチュア)。
この統合により、Canvaアカウントを持つユーザーはAffinityへの無料アクセスが可能になりました(※利用にはCanvaアカウントでのサインインが必要)。Canvaの持つ強力なAI機能(例:生成塗りつぶし、画像/ベクター生成など)がAffinityでも利用可能になるなど、両ツールの連携によるワークフローの革新も期待されています。
CanvaがAffinityを無料化した背景には、プロフェッショナル層を自社のプラットフォームに取り込む狙いがあります。
Adobeの寡占状態を崩す「入り口」として無料化し、ユーザーをCanvaのAI・クラウド基盤に誘導する戦略とみられています。
ツールの特徴とAdobeとの比較
Affinityシリーズは、Adobeの主要なクリエイティブソフトにそれぞれ対抗する3つの柱で構成されていましたが、最新の「Affinity 3.0」でこれらが統合されました。
| Affinity 3.0で統合 | 対応するAdobe製品 | 機能的な特徴 |
| Affinity Photo 2 | Photoshop (写真編集/ビットマップ) | 非破壊編集に強く、リアルタイムでのフィルター適用が高速。大きなファイルを扱う際のパフォーマンスが良い点に定評があります。プロレベルのRAW現像機能も搭載。 |
| Affinity Designer 2 | Illustrator (ベクターグラフィック) | 独自の「ペルソナ(機能モード)」切り替えにより、ベクターとピクセルをシームレスに切り替えて作業可能。100万%以上のズームが可能で、高速な動作が魅力。 |
| Affinity Publisher 2 | InDesign (DTP/レイアウト) | 3.0で他の2つと統合され、DTP機能が強化。統合されたワークフローにより、デザインから印刷用レイアウトまでを1つのアプリで完結させやすくなりました。 |
乗り換えの障壁は低い
Affinityは、Adobe製品と同様のレイヤーや調整機能、ブレンドモードといったプロフェッショナルな機能を提供しており、Adobeユーザーが比較的スムーズに移行できるよう、UI/UXも似せて設計されています。プロの要求水準を満たす機能が、無料で利用できるようになった点は革命的です。
まとめ
Affinityの無料化とCanvaへの統合は、Adobeの強気なサブスクリプションに一石を投じる、大きなニュースです。
特に、以下のようなユーザーにとっては大きなメリットがあります。
- サブスク費用を抑えたい個人クリエイターや中小企業。
- Adobe製品の代わりとなるプロレベルの買い切り(現在は無料)ソフトを探していた方。
- Canvaとの連携で、デザインの手軽さとプロの仕上がりを両立させたい方。
ただし、AI関係の新機能を利用するためにはCanvaの有料プランへの加入が必要です。
あくまでAffinity本体の利用料が無料になったというもので、すべての機能が完全無料になったわけではありません。

Canva連携を通じて使えるAI生成ツールやクラウド共有などは、Canvaの有料プラン限定の機能として提供されています。
とはいえ、画像編集・デザイン制作・レイアウトといったコア機能の大部分は完全無料で利用可能。一般ユーザーや個人クリエイターにとっては、十分に“実戦投入できるレベル”の内容です。
筆者としても、この強力なツールが無料になったことで、まずは触ってみて損はないと確信しています。しばらく使ってみて、現在のワークフローや機能の充実度を確かめ、よさそうなら本格的にAffinityへの乗り換えを検討していきたいと考えています。
……なんせ、高すぎるサブスク料金が嫌で、いまだにCS5.5を使っているのでね!



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